菜の花畑―歴史都市新潟研究会のブログ

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某宿題の補足(その1) 文書の現代語訳

某宿題について、若干の補足をしておきます。

===某宿題===

昨年度、江南区郷土資料館で開催しておりました古文書学習会の<実践編>で読み進めてきた『新発田領八ヶ村・御料所十二ヶ村 出入双方訴状・返答書写』の第六通目の文書について、

 (1)差出の3人はどのような立場の人と考えられるか?
 (2)宛先の人物はどのような立場の人と考えられるか?
 (3)この文書は、どのようなことを伝えたかったのか?

を考えてみましょう。

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問題の文書についての翻刻は、こちらの記事をご覧ください。

また、訓読文は、こちらの記事をご覧ください。

 

この文書について、現代語訳をすると、次のような意味になります。

 

「手紙で申し上げます。厳しい寒さでございますが、ますますご健康でお勤めのことと、お慶び申し上げます。さて、そちら(石瀬代官所)の御管轄である割野組の村々とこちらの所領(新発田領)の城山村との水路をめぐる裁判について、御管轄の村方からの二通目の訴状(⇒第4通目の文書、2月のレジュメ参照)を送って来られましたので、その内容について、こちらの農民たちに問い質しましたところ、書面(⇒第5通目の文書、3月のレジュメ参照)を差し出しました。農民たちのことですので、不明瞭な箇所もございますが、ひとまず全文を書き写し、(別紙に添付して)ご覧に入れます。(問題となっている水路の)現場については、役人を派遣して実地見分をさせ、(その上で)内々に相談しようと思っておりましたが、雪が積もっておりますので、見分はまだしておりません。来年の春、雪が消えましたら、さらにまた御相談の上で、役人を派遣して調査し、ご連絡いたします。以前にも(石瀬代官所側から)おっしゃってこられましたように、どうにかして内々に和解するようにしたいと思います。右について、お知らせしておこうと思い、この通り手紙を出します。謹んで申し上げます。」

 

文書の内容を解釈する際のポイントは、敬語です。

文中に、特に主語(行為者)を明示していなくとも、敬語を使い分けることによって、その行為者が誰であるかを示しています。

例えば、「先だっても仰せ聞かせられ候ふ通り、」という箇所には、「仰せ聞かす」という敬語が使われているので、以前に「仰せ聞か」せてきた主体は、相手方の石瀬代官所(または文書の宛先である代官所役人の喜多川要太兵衛その人)ということになるわけです。

したがって、ここは、「以前にも(石瀬代官所側から)おっしゃってこられましたように、」という意味になります。

 

このように読むことで、この文書が出される前提として、石瀬代官所側から新発田の郡奉行側に、このような(面倒な)訴訟案件は、早いうちに和解させよう、という提案があって、新発田側もそれに同意してこの文書を送っている、ということが分かるわけです。

 

以上、某宿題の補足でした。

 

宿題の解答 (1)⇒解答(01) (2)⇒解答(02) (3)⇒解答(03)